遺言書が無い場合は、相続人全員が遺産分割協議をして、具体的な遺産分割の方法を決めることになります。 協議がまとまらない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができますが、原則的には相続人全員が話し合って、誰が何を相続するか決めることになるでしょう。 被相続人にとっては自分のものなので、それをどう処分するかについては自分で決めたいと思っても当然です。 そこで、民法で遺言というものが認められています。これによって被相続人は、自分の思いどおりに財産を処分することもできますし、あわせて被相続人の意思ということで相続人同士の争いを未然に防止できる場合もあります。 相続人はそれぞれいろいろな思いや苦労がありますから、それを客観的に判断してみんなで協議して同意をつくるのも難しい場合もあります。例えば長年音信不通の相続人と、亡くなるまで献身的に看病した相続人とで法定相続分どおりまったく同じでは、異論がでることも予想されます。 そこで、遺言者の意思で、どの相続人にはどのくらいという指定を、遺言ですることができるのです。
■相続人以外にも贈与したい、寄付したい・・・
遺言書では、どの相続人にどの財産を相続させるかのほかにも、遺言によって相続人ではない人に財産を与えることもできます。これを遺贈(いぞう)と言います。 例えば内縁の(未届けの)夫・妻は相続人にはなれません。いくら何十年同居した場合でも同様です。他に相続人がいればすべてそちらに行ってしまうでしょう。また、子の配偶者(例・息子の妻、娘の夫)に大変感謝していたとしても、その人は相続人ではないので、養子縁組でもしない限り相続できません。また、近所の人や個人的にお世話になった人も同様です。 ただし、相続人には最低保証分とも言うべき遺留分(いりゅうぶん)というものがあり、この「遺留分」による制限を受けますので、すべての財産を遺贈したくても相続人の権利である「遺留分」だけは相続人に取り返される場合もあります。遺留分については遺言書で全部寄付!できる?(遺留分)をごらんください。
■相続人に相続させたくない・・・
親不孝な子がいて、どうしても相続させたくない場合、遺言によってその相続人の相続分を減らすことや、相続分ナシにてしまうこともできます。ただし、後に述べる「遺留分」の制限はありますが。。。 さらに本当にどうしても相続させたくない場合、遺言で相続人を廃除してしまうこともできます。廃除については相続できない人もいる!(相続欠格・廃除)の項もご覧ください。 ただし廃除は家庭裁判所に申立てをして認められなければ効力を生じませんので、遺言による廃除については遺言者の死後、遺言執行者が廃除の申立てをすることになります。もちろん廃除の申立てが認められない場合もありますので、その場合の処置も遺言書に記載しておけばベストです。 ただし廃除が決定しても、その人の子が代襲相続(だいしゅうそうぞく・代わりに相続すること)する場合もありますので、注意してくださいね。。。
■遺言執行者の指定ができる
遺言執行者とは文字通り遺言の内容を実現するために手続を行う人間です。 信頼できる人や、法律専門家などが指定されることが多いようです。遺言で第三者に遺言執行者指定の委託することもできます。遺言執行者は廃除の申立てのような手続や、不動産や預貯金、各種名義変更の手続もすることができますので、相続人の争いや負担を和らげる意味でも、あるいは専門家を指定しておけばより間違いが少なくなる意味でも重要です。 遺言書を作成するときは、併せてこの遺言執行者も指定しておいた方がより確実でしょう。
■遺言書で子の認知をしたい・・・
認知というのは婚姻外の相手との間に生まれた子を、戸籍上の届出によって法律上の親子関係を創設する行為です。 認知をすると戸籍にも記載されるので、それにより様々な問題が生じることを恐れて認知届をしない人もいるかもしれません。婚外子は非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と言い、嫡出子(ちゃくしゅつし・婚姻関係にある両親から生まれた子)の1/2の相続分がありますから、このまま認知届をしなければその子は実際の子でありながら相続人から漏れてしまうことになりかねません。 そのため、遺言で認知をすることができるのです。 生前ならいろいろと問題になってしまうけど、死後なら。。。という感じでしょうか。。。
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